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◆FFX 短編 それぞれの物語

TOMORROW NEVER KNOWS

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10年前―――


一年中吹き続ける雪に足を取られつつ、ガガゼトの山を下る。
かつての大召喚士が『シン』との戦いで決着をつけんが為、訪れたといわれる荘厳としたナギ平原を抜け、そしてマカラーニャの森に着く。
そこは神秘なる木々が生い茂り、辺りは暗く時折彷徨う幻光虫が輝きをみせる。
湿気を含んだ空気はひんやりとしていた。
そこへ歩く一人の若い戦士―――足はおぼつかなく、体中は傷つき裂けた戦闘服の合間から血も滴っている。
「……っ!」
石に足を取られ地面に転がる。だが右手に持った大剣を支えに、尚も立ち上がる。
それは何度も繰り返していた。

早く、伝えないと…
早く、連れ出さないと…

男の胸の内は焦燥感に満ち、傷ついた体を癒す事なく歩き続けた。


友の願い―――最期の願い。
それは、自分にできる友への償いにも感じた。二人の命は失われ、そして俺だけが残った。
何度も罪悪感に苛まれた。
だったらせめてもの友の願いを叶えなければ。
それが、償い。
そして無限の可能性に賭けて、彼らの息子達に託す俺達の願い。

「『シン』のいない平和なスピラを作ってくれ」

目が霞む…ヤツに受けた傷の痛みは次第に感覚を失ってきた…
「無念……」
その場で倒れこむ。
前に進もうとする足はもげたように動かなくなり、それでも進もうと手で地面を掴む。
ジャリ…と、鈍い音をたてて砂を握りしめた。

「フッ……」

微かに唇に笑みをつくり、体を仰向けにした。
途中アルベドの男に傷の手当を受けたが、それもただの気休めにしかならなかった。
攻撃を避け損なり傷ついた右目の視力は失われ、木々の間から覗く青空は片目にしか見えない。

「こんな傷…」

アイツらに比べれば、この体の傷など大したことはない。
命があるだけマシだ。もう少しだけ、保てばいい。

倒れた地面は次第に血で湿ってきた。もうかなりの血が体から流れ、目が霞む訳も理解した。
「うっ…!」
動かない体に鞭を打ちながら、神経を集中させる。そしてまた足は目的地に向かって歩き出した。だがそれも束の間の出来事だった。

数歩動いた後、また地面へと倒れ込んだ。

「畜生…っ!」

志を半ばにして俺は逝くのか…友の願いを叶えられぬまま、この世界から消えるのか。
――― 悔しさと、哀しさで胸が張り裂けそうだった。
友の愛する息子達…。

『事が終わったら、ユウナをここに連れてきてくれ。あの子には…静かに暮らしてほしいんだ』

父を失った今、ユウナはどうしているだろうか?


『私は、お父さんを信じています。きっとこのスピラに平和なナギ節を作ってくれる…』

旅立ちの時、ユウナはそんな事を言っていた。 強い眼差し、父に似てこの世界を守ろうとしている。
だが…まだ幼い子供に父の死は辛いだろう。
たとえ二人の願ったスピラに平和が訪れても。

『ザナルカンドの、あいつを頼む。あいつ…泣き虫だからな、誰かついててやんねえと心配で心配でよ。
だからよ…頼むわ』


友の言うザナルカンドとは何処にあるのか。 あんなに帰りたがっていた息子の元へはどうやって行くのか。
…判らない。

「無限の可能性…か」

いつも信じていたこの言葉。言うのは容易い。だが願わずにはいられない。


ふと寝転がる体の上を覆う者がいた。
「怪我をしているのか」
それは雪山ガガゼトにいる種族…ロンゾの若者だった。
「俺を…ベベルに連れていってくれ」
「その体では無理だ」
判っていた。もうこの魂は半ば抜け落ち、今にも逝かんとしている事を…。
「近くの村まで運んでやる」
「いや…いい」
体を支えようとしているロンゾの若者の手を振り解いた。
「このままでは、死ぬ」
「ああ…そうだな」

死は怖くはない―――だが…約束を守れない無念さが、この世界にまだ命を留まらせている。

「ここで死んでも誰もおまえを異界に送っていかないだろう。せめて召喚士のいる場所に連れていってやる」
「……」
一瞬…ある思いが頭を掠めた。
「異界……」
そして、横に立つロンゾの若者に告げた。
「俺の…頼みを聞いてくれ」
「……」
若者は黙っていた。
「この世界はナギ節が訪れている…だがこれは束の間の夢だろう。すぐに『シン』は復活する。そしてまた悪夢が訪れる…。この死の螺旋の世界から連れ出して欲しい。被害が及ばない平和な村…ビサイドへと…」

この世界に幸福の永遠なんて、ない。
紛い物の平和に浸っている時間は残されていない。これはヤツとの闘いで身をもって確かめた事実だ。
「誰を?」
「大召喚士ブラスカの娘…ユウナを…」
若者は頷いた。
「お前にも事情があってここに来ているのだろう。迷惑を承知で願いたい。これは…死ぬ者達の願いだ」
そう告げると、口から大量の血が吹き出してきた。
もう、長くはない…
「俺には…十分すぎる時間だった…」
ロンゾの若者―――キマリは、もうすぐ旅立つ男を静かに見据えていた。
「承知した。このキマリ、ロンゾの誇りにかけて、お前の願いを受け入れよう」
「有り難い…」
「だが、お前はもう助からない。なにかまだ願いはあるのか?」
「いや…もう十分だ。俺はこれから友の願いを叶えに、旅立つ」

キマリは少し、表情を露にした。

「どこへ行く」
「夢の世界―――ザナルカンドだ」

無限の可能性にかける。死の螺旋はこれで終わらせなくてはいけない。
友の願い、叶えてみせる。

「……武運を祈ろう…」

「俺に祈りはいらない。信じられるのは己の心と、友の心だ」


これは、友と旅をして学んだ事だ。


「ああ…寒くなってきたな…」
少し、体が冷えてきた。
もうすぐ訪れる死の旋律が、深い深い海底の様な世界へと誘(いざな)う。
「さらばだ…キマリよ」

この世界に、己の未来に別れを告げた。
そしてキマリはアーロンの最期の旅立ちを見届けた後、聖ベベルへと旅立った。





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