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「◆FF4 カイン夢小説」
恋のかけら(長編)

FF4 恋のかけら 31・アガルト島編

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Final Fantasy IV・Dream Novel
恋のかけら・31



アガルトの島。
バロン国の領地よりも小さな島は、一つの集落を作り質素ながらもどこの支配下も受けずに生活をしていた。
そこの住人は主に人間族だったが、ドワーフの血を引くという。浅黒い特徴的な顔立ちで、成人男性でもバロン国の人間よりも随分と小柄で骨格が太かった。
腕力は桁違いに強く、アガルト出身でバロンの軍隊に所属している者は斧を片手に奮い、勇ましい戦いをしていた。

そのアガルトの村で、祖先は嘗て地下で暮らしていたと言い伝えがある。

「聞いたことがあるな」
カインはセシルの言葉に頷いた。
「島の中央にある火山に何か繋がるものがあるかもしれない」
手に持っていた石を翳すと、微かに硫黄の匂いがした。
「鍵…か」
「僕らがどこに進んでも、ゴルベーザは先回りをしているだろう。警戒はしないとね。ひょっとしたら罠なのかもしれないし」
「ああ…」
セシルの言葉に何か思い当たる事があるのか、カインは暫く無言になった後、目線を少しずらすと踵を返し、そのまま客室へと去っていった。

扉を叩く音がする。
「エミル、いるか」
次に扉が開き、カインが客室に入ってきた。
「カインか…」
「なんだ、寝てたのか」
ベッドの上に仰向けに寝ていたエミルがゆっくりと身体を起こした。
「うん、船の揺れに酔ったみたいだ…」
カインが側に寄りベッドに腰を下ろすと、エミルの額に手を当てた。掌にうっすらと湿り気を感じる。
「熱があるな…無理させたのが悪かったか」
「無理?」
「昨夜激し過ぎたか。きつかっただろう?」
暫く呆けていたが、その言葉の真意が判るとエミルの顔がサッと真っ赤に染まった。
「そんな事…ない!嬉しかった」
「そうか…」
両手を振って慌ててエミルは否定をする。その姿が何だか幼い少女の様に見え、カインは珍しく声を出して笑った。
「笑うな!」
恥ずかしがりながら抗議するが、すでに笑いが止まらなかった。
「悪かった。お前、普段の姿に似合わず恥ずかしがり屋なんだな」
「違う!」
額に触れていたカインの手が今度は顎に触れ、顔を持ち上げた。
「そんなに可愛い表情をみせるな…」
「可愛い…って」
上を向かせ、自分の唇を重ねる。
「んっ…」
「いや、違うな。俺だけに見せろ」
一瞬エミルは目を丸くし、カインの顔をまじまじと眺めたが、彼の真剣な表情に諦めて目を閉じ愛撫を受ける。
「カインは…相変わらずクサイ台詞を言うんだな…」
「…エミル」
「…っ」
言葉を遮るように唇を塞ぐ。
カインこそ、普段言わない言葉を私の前だけ言う。
エミルは胸の中で呟いた。
「ん、ふっ…」
舌先でエミルの唇をなぞると、甘い声が上がる。
熱い吐息を混ぜながら、耳元でカインは囁いた。
「ゴルベーザの声が聞こえるか」
その言葉にエミルの両肩がビクリと震えた。
「…!?」
額にうっすらと冷や汗が滲む。
「そうなんだな…」
震えるエミルの肩に手を置くと、カインはいつもとは違った優しい表情を見せ、額に口付けた。
「な…んの事…?」
「……」
カインは無言で立ち上がり、扉へと向かう。
「…ちゃんと休んでおけよ。目的地は近いからな」
そして、エミルに軽く手を上げ去っていった。

昨夜から現れだした負の感情。
エミルの中で蠢き、徐々に大きくなるようだった。
暗黒騎士が新しい暗黒の武器や鎧を装着すると呪いや負の生き物、デーモンの声がすると聞いたことがある。
もしや、今装着している鎧や剣に呪いがかかっているのかと脳裏を掠め、胸当てや太股に皮バンドで括り付けてあるナイフなどを外してみる。だが、この気分の悪さは治る事がなかった。
寧ろ頭の中で響く声がハッキリとしてくるようだった。
「やはり…ゴルベーザからは逃れられないのか」
エミルは窓の外の景色を見ながらポツリと呟いた。 

暫くベッドの上でうたた寝をしていると、ローザが訪ねて来た。
「エミル、気分が悪いの?」
話したのはカインだろう、とエミルは思いながらゆっくりと起きあがると、中に招き入れた。
「ん、大丈夫。私飛空艇は苦手みたい」
「貴方とは二度目の飛空艇旅行よ。前はそんな事なかったじゃない?」
「そうだった」
クスクス、と鈴が転がるような可愛らしい笑い声を上げながらローザはエミルのベッド脇に座った。
女の子らしくて、緩やかなカーブを描く豊かな金髪からは花の香りが時折漂う。
世の男なら誰しもこんな女性に惹かれるのではないか、とエミルは自分の筋肉質な足を見ながら思った。
鍛えられた体は男戦士程ではないが、毎日の鍛錬で肩や腕にも堅く筋肉が付いていた。
せめてカインの前では女らしくしてようと、往年の戦士に似つかわしくない短いパンツやノースリーブに鎧を装着し、なるべく軽装にしていたのだが、かえって自分の武骨さを見せつけている気がして恥ずかしくなった。
「少し、治療をするわね」
白魔道士のローブの袖を捲り、細長い指をエミルの額にあてる。
小さく詠唱をすると、そこから白い光が漏れてきた。
「大丈夫…熱くらい」
「じっとしてて」
時折、ローザの強引な言葉に逆らえない時がある。
気の強いところが優しいセシルの性格に合っているのだろうか、と目を閉じながら考えていた。
「カインは…」
ローザの言葉にドキリと心臓が鼓動を打つ。
「エミルの事が大事なのね」
「ローザ?」
「普段無口で無愛想なカインなのに、エミルの事を話す時は…さっきもね、私の部屋にいきなり入って来て」
「え…」
「私びっくりしたの!だってカインが『エミルが熱を出しているんだ』だって。慌ててたのよ」
その状況を再び思い出したのか、ローザは口に手をあてクスクスと笑い出した。
「そんな、事を?」
うん、と頷くと、さらりとローザの肩から一房金髪が流れ落ちた。
大きくて深い緑色の瞳がエミルを見据える。
「うん、カインは貴方が一番大切な人なのね」
それは少し、寂しげな瞳だった。
「……」
「これで熱は下がったかしら。後はゆっくり休んで」
エミルの乱れた前髪を直してあげると微笑み、立ち上がって去っていった。

幼なじみの男の子はローザを想い、いつも一緒だった。
家族ぐるみで付き合いのあったハイウィンド家とファレル家はバロン国でも貴族として、王家とも昔から深交があったとカインから聞いていた。
そんな二人を祝福する声が少なからずあった事は城内にいて判っていた。
いくらバロン国が王不在とはいえ、身分制度は廃れない。
人々の心の中にも身分の違いというものは根強く残るだろう。
片や小さな村出身のエミルにとって、この差は大きく、越えられない壁があると今更ながら実感をしてしまった。
「ダメだ…な」
不安になる心。
私は、何を期待しているんだろう。

―――殺せ。

不安定な心に刺さる。
エミルの脳内にある言葉が囁かれる。
それは低く、デーモンの囁きのように甘い。
「…っく」
ゴルベーザの洗脳は心の隙をついてくる。

―――ローザを、殺せ。

「馬鹿な!そんな事はしない!!」

額に汗が滲む。
息が荒くなる。
こんな気持ちは誰にも悟られたくなかった。

「失せろ!!穢らわしい!」
太股に括りつけた皮バンドから短剣を抜き、空を斬ると思考を振り払う。
静寂が広がり、冷や汗が頬を伝う。
「……?!」
汗を拭おうと両手を見ると、血の固まりがべっとりと付いていた。



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