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「◆FF4 カイン夢小説」
恋のかけら(長編)

FF4 恋のかけら 33

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Final Fantasy IV・Dream Novel
恋のかけら・33



「あの石でアガルトの山が噴火…したのか」
セシルの顔が青ざめていた。
「まさか、こんな事に…」
地上では熱風が吹き荒れ大地を焦がす。山頂では黒い噴煙と溶岩を狂ったように噴き出している。
凄惨な景色に誰もが言葉を失っていた。

しかし噴火した火山は時間と共に沈静し、噴煙も次第に収まっていった。
飛空艇の被害を避ける為、シドは近くの小島に舵を取り暫くそこで停泊する事になった。
「恐らく、あの井戸は地下の火山に続いていたんじゃな。あのマグマの石で活性化して噴火したと推測できる。なに、時期に落ち着くじゃろう」
「住人に聞いたところだと村の被害もそんなにないらしい。家屋も噴火に備えた頑丈な作りをしていて損害も少ない。昔からの言い伝えで噴火した際の避難も徹底していたと言っていた」
カインが村に偵察に行き、状況をセシルに伝えると、皆はホッと胸をなで下ろした。
「そうか…取り敢えず良かった」
「しかし今日の出来事でさすがに疲れてしまったわい。さてと、ワシゃ先に寝るぞい」
シドは晩飯を済ますと、さっさと寝室へと行ってしまった。
「僕達も寝るか…明日再びアガルトに行くからそれまでゆっくり休んでくれ」
「承知した。皆も休もう」
セシル達もそれぞれの寝室へと向かった。


エミルは食べ終えた食器を片付け、自分の寝室へと歩いた。
「体調は良くなったかい?」
飛空艇の客室に続く長い廊下を進むと、扉の前でセシルに声をかけられた。
「ん、大丈夫」
「無理しないでくれ」
ささやかなセシルの気遣いが時々胸を締め付ける。これがパラディンに選ばれた騎士の志なのだろうか。
「セシルこそ」
「僕?」
「また調べものをするんでしょ?今度こそ寝不足にならないように、ちゃんと寝てよ」
エミルの気遣いにセシルもまた喜び、微笑んだ。

自室の扉を開けると、カインがグラス片手にソファーで寛いでいた。
「……自室に戻らないのか?」
「俺の部屋はここだ」
「嘘つき」
「シドに貰ったエール酒だ。お前も飲むか」
空のグラスに酒を注ぎエミルに手渡す。
きめ細やかな泡立ちの琥珀色の液体は、シドの好きな酒だった。
「飲み過ぎるなよ」
カインからグラスを受け取り、そのまま喉に流し込んだ。程良く冷えたアルコールが喉を通り、ゆっくりと酔いが体に回るようだった。
「美味しい…」
「やはりバロン国のエール酒が一番美味いな。カイポやファブールの酒なんて飲めたもんじゃない」
カインはソファーで足を組みながらグラスを仰いだ。
「カインが酒を煽っているイメージはないのだが…」
「ゴルベーザの配下にいたときは各国を回って、夜眠れない時は酒を飲んでいた」
グラスを持った手を伸ばし、蝋燭の灯に翳すと、琥珀色の淡い泡がグラスの上の縁にキラリと輝いている。二人のその泡の行方を目で追っていた。
「眠れない?」
「お前のことを考えると眠れなかった」
「嘘つき」
エミルは笑った。
「どうとでも…」
ククッっと喉の奥で笑うカインの横に座ると、その瞳を見つめた。
「…もしかして、カイン。酔ってるのか」
「いや…」
「目が赤いぞ…」
いつもの鋭い碧眼は影を潜め、艶を出しているように見える。その瞳の奥を覗こうとじっとエミルはカインを見詰める。
「……」
カインはふと、そのエミルの瞳に捕らわれる感覚を覚えた。
「そんな事はない」
よもやこの程度で酔いが回ったのかと、瞬きをして我に返る。
「珍しいな」
エミルは軽装で洗いっぱなしのカインの髪に触れ梳くと、サラサラと指の間に流れる。
「…お前がよく眠れるように酒を持ってきたのに、お前は俺を疑うのか?」
カインは持っていたグラスの中の酒を口に含むと、そのままエミルの後頭部を掴み、引き寄せながら唇に触れる。
「…っ」
熱い液体がカインからエミルの唇を伝い、喉元に流れてくる。
アルコールの強さとカインの舌の熱さに酔わされ、いつしか頭の芯がぼうっと霞みがかかってきた。
「…ん、んんっ」
喉の奥から甘い声が漏れる。口元から溢れる水音が耳元でいやらしく聞こえていた。
疲労しているからだろうか、余計に酔いが回り、身体が熱くなって仕方が無い。
両腕をカインの首に絡めて、体重をかけ寄りかかった。
それを受け止め、カインはエミルの首筋に唇を寄せる。
アルコールが全身に回り、仄かに朱に色付き熱くなっているエミルの柔らかな肌に高ぶるものを感じ、思わず強く吸う。
「んっ…」
甘い痛みにエミルが眉根を寄せる。
唇を離すとそこには赤い印が刻まれていた。

「今日は疲れただろう…寝るか」
そっとエミルの肩を抱き寄せる。
「ん…」
カインはエミルの顎を指で持ち上げ、飲み込みきれずに唇から漏れている酒を拭ってやると、そのまま二人はベッドに横になり抱き合いながら眠った。

慌ただしい一日だった。

これからもっと忙しくなるだろう。
だけど、今は何も考えたくなかった。

夢は見たくなかった。
ただ、カインの胸の中で眠りたい。
そう願っていたのに。


―――声が聞こえる。

それは、男の声だった。
昔、どこかで、この声を聞いた。

『お前達…に……託…』
『月に…が…』
『お前の…使命』

何度も何度も波のように寄せ、また引いていく声。

「―――?!」
エミルはその声に驚き飛び起きると、まだ辺りは闇に包まれ静寂に耳鳴りがした。
「…月…」
横を見ると、カインが静かに寝息を立てて眠っている。
こんなに熟睡しているのは珍しいな、とエミルは思いながらそっとベッドから抜け出した。
「……」
甲板に出る扉を開けると、涼しい夜風が頬を吹き抜ける。
前方の碇が見える付近まで歩くと、ふと黒い人影がぼんやりと浮かび、目を凝らすとそこには銀髪を風に靡かせた男が立っていた。




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