FC2ブログ

「◆FF4 カイン夢小説」
恋のかけら(長編)

FF4 恋のかけら 34

 ←カイン=ガリ? →FF13 ライトニングになりきってやる
Final Fantasy IV・Dream Novel
恋のかけら・34



「セシル…」
船の鉄柵に寄りかかり考え事をしていたのか、こちらを振り返るのに少し間があった。
「…エミル?」
「さっき寝ろ、と言ったじゃないか」
何もない小島に広がる闇は深い。一寸先でさえ漆黒に覆われてしまう。
表情を確かめようとエミルはセシルに近付いた。微風が穏やかにエミルとセシルの髪を靡かせる。
「ごめん…考え事が多くてさ」
セシルは照れ臭そうに目線を逸らして笑った。
「考え事?」
「うん、考え事」
思えば、バロンの兵学校に進んだ時もそんな態度を見せる事があった。
一人学校の広間でぼんやりと佇み、何か物思いに耽る姿は寂しげだった。
「…あんまり悩むとハゲるぞ」
「あはは、酷いな、それ」
エミルの皮肉な言葉におかしくなり、セシルは屈託なく笑った。
「でも聖騎士は皆の希望だから、光だから…なんて言われちゃ、悩むよね」
「エミル?」
エミルは微笑むと、鉄柵に背を向けて寄りかかる。乾いた風が一つ吹き抜けた。
「セシルって、暗黒騎士の時から陛下の為に、民のために、って頑張っていたのに、今更だけどこんな事になって酷いし、辛いよね」
「……」
セシルは口を噤みエミルを見ている。
脳裏にはあの学生時代の思い出が蘇っているのだろうか。
「私もだけどさ、バロン国に来てから身分の違いを感じる事が多くなった。それにこの仕打ちは理不尽だと思う」
この混乱した世界を一人の聖騎士に委ねてしまう。そんな世の中にふとエミルは違和感を感じた。
「そんな事…は」
やがてセシルの口唇が微かに開く。


セシルやローザの幼い頃の話はカインから少しずつ聞いていた。
ある教会に捨てられていた子供を王が拾い、保護されたのがセシルだった。銀髪のブルーグレーの瞳。バロンの民にはない人種。珍しさもあったかもしれない。それにどこか神秘的で秘めた能力も元騎士だった王は感じていたのだろう。
やはりセシルの風貌に懐疑的な貴族達は反対したという。どこの素性かも判らない子供を王の庇護下におく。周辺の貴族や王の親族、比較的側にいたローザの母親さえも、セシルにはいい顔をしなかった。
親の顔を知らずに、恵まれない幼少期を過ごし、バロンの孤児院で育てられたセシルは周囲の目を気にしながら成長を重ねていった。
幼少期はあまり覚えていない、とセシルは以前エミルに漏らしていた事があった。そういった辛い過去があったからだろうか…とエミルはカインに話を聞いた時に心の中で思っていた。
やがて王の勧めで軍人として国に尽くすことになり、バロン屈指の暗黒騎士団の隊長となっても、ローザの母親の態度は変わらなかった。寧ろ暗黒の力さえ恐れていたとも言う。


「…うん、ありがとう」
セシルはニコリ、と笑っていた。
「セシル?」
「やっぱり昔から知っている仲だからかな、今の言葉が嬉しくてさ、つい…」
「うん…」
強く夜風が二人の間を流れる。
セシルの薄い旅人の裾を靡かせ、豊かな銀髪が風に舞う。
エミルが瞳を覗くと、濃いブルーグレーの色が奥深く輝いている。
「……」
その姿が綺麗だと思った。
カインとはまた違った中性的な美しさ。月の光に照らされた姿が淡く光って良く似合う。心臓がドキリと強く鳴った。
「エミル?」
「ん、何でもない…」
そして誰かに似ている、とも思った。
もう思い出したくなくて奥に閉じ込めていた筈なのに、あの屈辱が蘇る。
私の身体を刻みつけた男…
そう感じた途端、鼓動が早くなる。


私を支配した、あの男…
あいつも銀髪だった。


―――殺せ。


「……っ」
急激に気分が悪くなり、エミルはその場でうずくまった。腰に携えた短剣の鞘が地面に擦られ、鈍い音を立てる。
「大丈夫か」
セシルもその場で屈み、エミルの背に触れた。
「……セシル」
「何だ?」
エミルの強い眼差しにセシルの動きが止まった。
「…貴方と、同じ銀髪の男を…知っているか?」
「いや…」
苦しさに眉間を寄せたエミルの顔を見る。
その表情もまた、険しかった。
「私が…ヤツに捕らえられていた、時に…」
「ヤツ、とは?」


―――止めろ。


「……くっ!」
「エミル!」
頭の奥で声が聞こえた。
突き刺すような激しい頭痛が襲ってくる。頭を抱え込んで歯を食いしばった。
「はぁ…っ!ああ!」
あの声が聞こえる。
「どうしたんだ、エミル!」
「ダメ…私に、近付かないで」
「え…」
脳の奥で声がへばりついてくる。
「…今近付いたら貴方を、殺めてしまう…」
「エミル…!?」


―――止めろ。


―――殺せ。


―――セシルを殺せ。 


それは津波のように頭の中で襲ってくる。その声に流されたら、今にも腰に差した剣を抜いてセシルに飛びかかってしまいそうだ。


「ローザとカインを呼んでくる」
「やめて!」
二人を呼ぼうと翻したセシルの腕を掴んで制した。 
「エミル…」
「大した事、ないから…こんなの、すぐに収まる」
額から吹き出した冷や汗が筋を作りながら頬を伝い、ポタリと地面に落ちた。
痛い、頭が割れそうで吐きそうだ。
「そんな事ないだろ!顔が真っ青じゃないか」
セシルはエミルの両肩を掴むと抱き寄せ、そのまま軽々と抱き上げた。
「?!」
「疲れている彼らを起こしたくない気持ちは判るけど、僕は君が大事なんだ」
「セシ、ル…」
セシルの強い眼差しが黒い胸の内を何もかも浄化してくれるようで、エミルは目を閉じた。


「…んっ」
操舵室の部屋の片隅まで移動するとそっとエミルを下ろした。痛みで意識が朦朧としているエミルの額にセシルの手の手が触れ、小さく詠唱を始める。
「…そっか…聖騎士は、白魔法が使える…ん…だよね」
手の内から白い光が溢れ、エミルの身体へと流れ込む。
「気休め程度だけどね…」
「ううん、暖かい、よ…」
飛空艇の壁に凭れ、何度かセシルのケアルを受けると急激な眠気が襲い、その場で倒れるように眠りについた。
「……」
小さく寝息を立てるエミルに向かって、セシルは再び詠唱をすると、エミルの額に手を翳す。
目を閉じ、心の中を覗く。
「ライブラを使っても…何も見えない、か」
ひょっとしたら危惧していたエミルの背後が判るかもしれないと期待をしたが、黒い影に覆われ何も判らなかった。
ふぅ、と軽く溜息をつき、瞳を閉じるエミルを見る。ふと心に引っかかるものがあった。
「まさか…」
セシルの瞳が動揺し、色濃くなる。
昔感じていた、闇の心。
もう一度確かめようと、エミルの額に触れようとする。


「見えたか?」
「!!」
不意に背後から声をかけられ、セシルは慌てて振り返った。
「…カイン」
二つの月明かりを背に、カインが立っていた。逆光で表情は判らない。
「今ライブラを唱えただろう。何か判ったか」
「いや…」
「そうか」
カインは短く溜め息をつくと、壁際に凭れて眠るエミルを抱き上げた。
「カイン、何か知っているか」
「何を、だ?」
「銀髪の男の事だ」
一瞬ピクリとカインの眉が引きつったが、直ぐに戻る。
「いや、知らんな」
それだけ言うと、カインはエミルを抱えたまま去っていった。




FC2 Blog Ranking


二次小説ランキングへ

にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ

にほんブログ村

関連記事
スポンサーサイト





総もくじ 3kaku_s_L.png ◆FF4 セシル×ローザ
総もくじ 3kaku_s_L.png ◆FF4 カイン×ローザ
総もくじ 3kaku_s_L.png ◆FF4 カイン夢小説
総もくじ 3kaku_s_L.png ◆FF4 ジ・アフター
総もくじ 3kaku_s_L.png ◆FF4 前世代の物語
総もくじ 3kaku_s_L.png ◆FF4 セシルの物語
総もくじ 3kaku_s_L.png ◆FFX アーロン×ティーダ
総もくじ 3kaku_s_L.png ◆DDFF カイン×ライトニング
総もくじ 3kaku_s_L.png ◆DDFF クラウド×ティファ
総もくじ 3kaku_s_L.png ◆DFF ティーダ×ユウナ
総もくじ 3kaku_s_L.png ◆DDFF ティーダ×セシル
総もくじ 3kaku_s_L.png ◆風光る・沖田総司×セイ
総もくじ  3kaku_s_L.png ◆FF4 セシル×ローザ
総もくじ  3kaku_s_L.png ◆FF4 カイン×ローザ
総もくじ  3kaku_s_L.png ◆FF4 カイン夢小説
総もくじ  3kaku_s_L.png ◆FF4 ジ・アフター
総もくじ  3kaku_s_L.png ◆FF4 前世代の物語
総もくじ  3kaku_s_L.png ◆FF4 セシルの物語
もくじ  3kaku_s_L.png ◆FF4 イラスト
総もくじ  3kaku_s_L.png ◆FFX アーロン×ティーダ
もくじ  3kaku_s_L.png ◆FFX コミック
もくじ  3kaku_s_L.png ◆FFX イラスト
総もくじ  3kaku_s_L.png ◆DDFF カイン×ライトニング
総もくじ  3kaku_s_L.png ◆DDFF クラウド×ティファ
総もくじ  3kaku_s_L.png ◆DFF ティーダ×ユウナ
総もくじ  3kaku_s_L.png ◆DDFF ティーダ×セシル
もくじ  3kaku_s_L.png ◆FF6 短編小説
もくじ  3kaku_s_L.png ◆FF7 短編小説
もくじ  3kaku_s_L.png ◆FF9 短編小説
総もくじ  3kaku_s_L.png ◆風光る・沖田総司×セイ
もくじ  3kaku_s_L.png ◆過去記事
  • 【カイン=ガリ?】へ
  • 【FF13 ライトニングになりきってやる】へ
  • Tag List 
  •  * |

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【カイン=ガリ?】へ
  • 【FF13 ライトニングになりきってやる】へ