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「◆FF4 カイン夢小説」
恋のかけら(長編)

FF4 恋のかけら 42

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Final Fantasy IV・Dream Novel
恋のかけら・42



敵に裸体を晒されても、羞恥心はなかった。
ただ、目の前の男をこの手で殺してやると思った。
「許さない!ゴルベーザ!」
エミルは意識をはっきりさせると、素早く起きあがり、周囲にあった蝋燭の燭台を掴んで振り回し牽制した。
「…ほう、洗脳が薄れたか。それとも」
それでもゴルベーザは余裕の笑みを浮かべながら、暴れるエミルの腕を素早く掴んで制した。
「離せ!」
その力は強く、エミルがどうもがこうとびくとも動かない。
「最初から洗脳など効いていなかったのか」
黒にも似た深紅の両の眼でエミルの瞳を見るが、即座に逸らされた。
「お前には関係ない!」
以前は効いた催眠術も今度は弾き返される。
「まさか、無意識にやっているのか?私の術を破るなど余程の精神力がないとできぬものだが」
ゴルベーザは思索しながら、掴んでいた腕をゆっくりと離す。
エミルは即座に体勢を整えると、壁際に寄り大きく息を吐いた。しかしゴルベーザは何もしない。
彼の不可解な行動に、エミルは怪訝な表情を返した。
「やはり、お前は…」
ゴルベーザは何かを胸に秘めたまま、独り言のように呟いた。


「すみません、クリスタルはゴルベーザの手に…」
セシルとカインはドワーフの城に戻り、そのままジオット王がいる王の広間に報告に向かった。
「止むを得ん。こうなっては最後のクリスタルを死守するしかあるまい」
王は予期していたのか、慌てる風もなく報告する二人に労いの言葉をかけた。
「最後のクリスタルは何処にあるのでしょう?」
傷の深いカインの手当てをしながらローザは王に尋ねる。
「南西にある封印の洞窟じゃ。ゴルベーザが向かったが、慌てるでない。封印を解く鍵が無ければあの洞窟に入ることは出来ん。そこでじゃ、お主らに頼みがある!」
すっとジオット王は玉座から立ち上がると、壁に掲げてある地底の地図の近くに寄り、何かの位置を確認しはじめる。
「クリスタルを奪われたのも、僕らの責任です! 何か力になれるなら…」
「ゴルベーザが封印の洞窟に向かっている今が、チャンスじゃ。バブイルの塔に潜入して、7つのクリスタルを奪い返してもらえぬか?」
王が地図のある場所を指した。
そこはマグマに囲われ、中心に天に続きそうな大きな塔が描かれている。
「バブイルの塔に?」
「敵の本拠地に潜入しろとおっしゃるか!?」
ヤンは突拍子もない王の提案に声を荒げた。
「心配要らん! 我らの戦車隊が敵を引付ける! その隙に、お主らにクリスタルを奪還して欲しい! ゴルベーザのいない、今しかない!」
「…どうする」
ローザの手当てで粗方傷が塞がり、腹部に包帯を巻いたカインはセシルに近付くと、指示を求めた。


この地底には太陽が無く、昼と夜の区別がつかない。そこで生活をしているドワーフ達は自分達の定めた時間によって一日の行動を決めている。なのでどの場所にも砂時計や時計が設置されており、今は夕刻を指していた。
ジオット王の計らいで、セシル達にドワーフの城の客室用の個室が宛がわれ、今はその闘いの疲れを癒すために各々の部屋で寛いでいた。
「カイン」
「何だ、ローザ」
赤い絨毯が敷き詰められた長い廊下で、カインは後から着いてきたローザに呼び止められ、立ち止まる。
「大分傷が塞がったわね、良かった」
「ああ、感謝する。随分と白魔導の腕が上がったな。セシルよりも傷に効いたぞ」
「当たり前。もうセシルに負けていられないわ」
「フッ、そうだな…」
ふと、カインの目が優しくなる。
その華奢な姿に似合わず頑固な性格は幼少の頃から変わっていないな、と思う。
「ねぇ、カイン」
「何だ?」
傷の深かった胴部分の傷を確かめる為に、ローザは腰の包帯に触れると、まだ痛むのかカインの表情が一瞬歪んだ。
「エミルの事、気を落とさないでね」
「それは…無理な話だな」
「…カインのせいじゃないから」
判っていた答えだったが、カインの意固地にローザは小さな溜息を吐いた。
「いや、慰めはいらない。俺の慢心が皆を危険な目に合わせた。エミルにも…」
その先の言葉は腹に飲み込んだ。幾ら愚痴をここで溢していてもエミルが戻って来るわけではない。カインは代わりに瞳をローザに合わせた。
「カイン…」
その瞳を覗くと、青い色に戸惑いが混ざっている。ローザは少し驚いて、逆に目線を逸らしてしまった。
「すまないな」
目を伏せるとカインは踵を返し、ローザの前から去っていった。

自分の心はこんなにも弱い。エミルの居ない今、改めて思い知らされる。
嘗てセシルと別れゴルベーザの下、各国で夜を過ごした時に強く感じた。
眠れずに酒を煽り、酔いで無理矢理寝た時もあった。
──お前に会いたい。
こんな風に誰かを求めた事は今までなかった。自分は人間関係が希薄だと思っていたからだ。それは幼少の時のトラウマからなのだろうが、逆に愛しい者に対しては依存してまう。
(駄目だな…)
奥底にある欲求に気が付く。まだ、自分は精錬が足りない。
カインは寝室に置いていた槍を掴むと、闇の中へと消えていった。


「お前の父親はバロンの騎士だったな」
「……」
エミルはゴルベーザの問いに答えずに睨み付けた。
「私はバロン国の赤い翼の隊長だった事を忘れたか?近衛兵の素性等すぐに判る」
「お前には関係無いだろう!」
触れられたくない過去を、敵であるこの男に言われたくなかった。
「いや、大いにある」
「……」
「20年以上前、バロンの近衛兵の男がある夜に教会で男と女の赤ん坊を拾った」
ゴルベーザの言葉にエミルの表情が変わる。
「その兵士はすぐに保護した赤ん坊達を城へと連れて帰った。いつもの如く自分の子として育てようとしたんだな」
「そんな…」
聞いたこともない昔話だった。だが、思いあたる節があった。エミルの顔がみるみる血の気を失い、言葉を失う。
「あの大戦後の混乱。今時捨て子なんて珍しい事ではない。だが、貧しい村故に何人も子供を育てられる訳ではない。男はバロン王にこの事を報告すると、哀れんだ王はその男の赤ん坊は自ら育てると言う」
「それが…セシル」
ゴルベーザが頷く。
「そう言う事だな。セシルの素性はバロンの捜索力をもってしても不明だがね」
部屋の隅で裸体を隠しているエミルにゆっくりと近づく。そして再び頬に触れると、今度は抵抗をせずに大人しくしていた。
「そして、お前も…」
「私は誇り高きバロン近衛兵ウェッジの娘、エミルだ!」
信じられない、否、信じたくなかった。
だけど、父や兄弟達と生活をするにつれて思いあたる事は多々あった。父は母との間に子供が産まれなかったのではないかと、大人になるにつれ強く思うようになっていた。
それほど父母に自分は似ていなかったのだ。

「…クックッ。それでも良い。私はお前の出生にとても興味があるがね」
「何故だ」
「私の術は血液を相手の体内に取り込ませる事で完成させる。私の血を使うんだよ。そうする事で相手を意のままに洗脳、時には姿さえ変化させられる」
魔物に姿を変えられ、戦死した近衛兵隊長のベイガンを思い出し、悔しさで唇を噛んだ。
「道中、私の声が脳の中に聞こえてきただろう?」
「……」
「普通の者ならその声に騙され、操れる。だがお前には効かなかった」
エミルの額に汗が滲む。
「バロンの兵士達はおろか、あの精神力が強いカインでさえ私の意のままに操る事ができたのに、何故だ?」
ゴルベーザはエミルの額に手を宛て、そして髪を梳いた。
さらさらと金の糸が指に絡み、それを愉しそうに彼は見ている。
「私はお前に同じ血を感じるんだよ…エミル」


「カイン…」
「構わないでくれ、ローザ」
城近く、マグマが吹き荒れる岩山でカインは無心で槍を振り続けた。少しでもこの乱れた心を払拭したかった。こんな気持ちのままで再度ゴルベーザと対決すれば必ずやられる。
それだけゴルベーザとの力の差は歴然としていた。洗脳され仕えていた時に嫌というほど思い知らされている。セシルとヤンの三人でどこまで太刀打ちできるのか、それさえも判らなかった。
「そんな事できないわ。貴方は大怪我をしたのよ。まだ傷が完全に塞がって…」
カインが気掛かりで後を着いてきたローザは、心配そうに岩の側に佇み、カインの背中を見守っていた。
「そんな事は判っている。だが俺はもっと…あいつを守れる位に強くなりたいんだ」
世界に名を残すために鍛え上げてきた身体も、いつしか一人の愛する人の為に強くなりたいと目標になった。
「カイン…私は」
「セシルが心配するぞ。もう部屋に戻れ」
振り返らずにローザに告げる。
「ううん…」
だがローザは何度も首を横に振った。
「ローザ?」
「私…」
頬が少し赤らんでいる。
「私はエミルの代わりになれないの?」
「……」
ローザの言葉にカインは手を止める。
振り返ると、深緑の瞳が自分を射抜くように見ていた。







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