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「◆FF4 カイン夢小説」
恋のかけら(長編)

FF4 恋のかけら 43

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Final Fantasy IV・Dream Novel
恋のかけら・43


「どう言う事だ?」
振り上げいた槍を納め、ローザを見る。
「貴方がエミルを愛しているのは判っているわ。エミルだって、ゴルベーザの飛空艇に捕らわれていた時にカインを愛しているって言ってたの」
ローザの口から飛空艇と呟かれた瞬間に、カインの眉間がピクリと動いた。
「でも、幼い時から私はカインと一緒にいたわ。誰よりも、ううん…エミルよりも貴方の事を知っている」
「……」
「だから、今、貴方がどんな気持ちなのかも……」
緩やかなカーブのかかった長い金髪がふわりと揺れ、白く細い両腕がカインの首もとに絡んでくる。その細い身体を受け止め抱くと、胸元から花の香水の華やかな香りが鼻腔を掠めた。
この香りは幼少の時から嗅ぎ慣れ、二人を幼い時に戻すのに充分だった。
「…判るのか?」
カインもまた左手でローザの背をさすり、その柔らな波打つ金髪を指に絡めた。
「ええ…寂しいでしょ」
その甘い言葉は、カインの耳元で吐息と共に囁かれた。
やけに積極的なローザに心の中で驚き、両肩でローザの肩を掴みそっと離す。瞳を覗くと深緑の美しい瞳が艶を持ちながらカインの碧眼を覗いていた。
「…ん…」
その瞳が閉じ、細い指がカインの胸にあてられる。そして再び顔が近づいてふっくらと艶やかな唇がカインの唇を軽く啄むように重ねられた。
その柔らかい感触にカインの胸中がざわめく。
「ローザ…」
口付けをそっと外し、耳元で囁く。嫌に甘い声だとカインは自嘲した。
ローザに未練がないと言えば嘘になる。
エミルを哀しませたのも、この未練のせいだ。

『武運を祈っているから』
『だから必ず帰ってきて』

セシルと共にバロンを旅立つ朝、ベッドの上で悲しげな顔をしていた彼女が瞼の裏に浮かんだ。
こんな時に自分の甘さを痛感してしまう。

どうして、俺は彼女を泣かせる事しかできないのだろうか。
こうやって再び過去に愛した女に浮ついてしまう自分の浅はかさを悔やむ。
だけど…

「お前は愛しい…」
抱き締めた腕に力を込める。
ローザの腰の細さに胸が高鳴り、男としての自分の意思の弱さを痛感する。
だが、もう迷わない。
「カイン…」
受け入れられたとローザが熱い溜息を付き、声を少し震わせ名を呼ぶ。

「愛しい…俺の幼なじみだ」
ローザの目が驚いて見開かれる。

「すまん」
「うっ…!」
その瞬間、ローザの後ろ首に強い痛みが走った。
気を失いそのままガクリと前に倒れ、カインは優しく抱き止めた。
溜息を深く吐く。心の中に虚しい気持ちだけが残った。
(俺は…まだ…)
夜風が優しく頬を撫でた。

「カイン…」
暗闇の中で自分を呼ぶ声が聞こえる。彼はこの様を終始見ていたのだろう。
「悪かった。他にする術がなかった」
その声に背を向けながら答える。
「いや、いい…」
その男は岩陰から姿を現した。
寂しげに、友の顔を見て複雑な表情を見せた。
いくら聖騎士と呼ばれる戦士でも、ひとりの男としてこの状況はどうしてもやるせない気持ちになる。
過去の二人を知っているからこそ、責める事も貶す事もできずにただ、目線を下げ苦笑するしかなかった。
「やはりな…」
気を失い、カインに抱えられたローザの腰に小さな短剣が携えられていた。カインはその短剣を手に取るとセシルの目の前に出した。
この剣で気を緩ましたカインを刺せと操られていたのだろう。
「俺を恨むか?」
眠っているローザをセシルに渡す。彼は優しく彼女を横抱きにすると、暫く俯いていた顔をカインに向けた。
「いや、ゴルベーザの洗脳だって判っているよ。だけど…」
「……」
セシルは肩をすくめ、苦笑いを返す。
「ちょっとキツかったね」
「すまなかったな」
フイとカインは視線を逸らした。そして地面に落ちた槍を拾い上げると、矛先を焼けた砂山に突き刺す。
「ゴルベーザの洗脳は人格を作り替える訳ではない。心の隙間、精神力の弱いところをついてくる。厄介なものだ」
「そうか…」
セシルはカインの言葉に頷く。
「例え強い正義の意思を持ってしても、その方向性を変えられれば、悪にもなれる。正義も悪も紙一重、だな」
「そうだね…」
セシルの脳裏に自ら進んだ暗黒騎士の志が浮かんだ。そして今は聖騎士として存在している。
悪と正義、どちらも表裏一体となり存在する。
アガルトの村で老婆がそんな言葉を呟いていた。
黙り込んだセシルを横目で見つつ、槍を地面から抜くと再び来た道を歩み始める。
「俺が再び洗脳されるとすれば、まだ心に弱い部分があると言う事だ」
「そんな事はないだろ…」
「いや…いつか…」
カインは振り返り、目を伏せた。闇に広がるマグマの灯が、彼の贖罪を受け入れるかのように身体を赤く照らす。
「……」
風が穏やかに凪ぎ、セシルの銀髪を揺らした。前髪の合間からブルーグレーの瞳が色濃く現れる。
「俺はまだ未熟者だ…」
そしてカインは瞳を開けセシルを見た。


ここは月の光さえ届かない。地底の塔に閉じ込められたエミルは小さな部屋で体を丸くして外を眺めていた。
「カイン…怒っているだろうな」
外気はマグマの熱で暑く湿気ている。エミルは与えられた白のローブの薄さに戸惑った。
地上の生活に慣れてしまい、この地底の文化の違いに驚かされる。時折外を歩くドワーフは上半身裸の者もいれば、女性は胸を覆う布だけで歩いているのを見掛けた。
「…もう戻れないのかな」
しかしまだカイン達は地底にいる筈。上手くここを抜け出して合流しなければいけない。
「くよくよしてても仕方ない。とにかく、ここを出ないと」
自分が敵に易々と渡してしまったクリスタルの行方も気になる。
エミルは立ち上がると、こっそりと拾っていた針金を使い、扉の鍵を開けて部屋の外へと出た。
「アンタ、ここを脱出する気かい?」
「…貴様は…バルバリシア…か」
長い廊下を歩いていると、ふと背後から女の声が聞こえた。この声には覚えがある。
先日セシル達と対決し、死んだ筈だった。
「随分な口の聞き方ね。お前みたいなのがゴルベーザ様に気に入られるとはね」
「お前は以前にセシル達に倒された筈…」
振り返るとバルバリシアは以前の姿のまま、エミルを冷たく見ていた。
「人間の死なんて私には意味がない。ゴルベーザ様が存在する限り、私は何度でも生き返る」
「……馬鹿な」
では何故あの時斬った体に手応えを感じたのだろうか。死してもなおアンデットのように生き返るのだろうか。
(ゴルベーザの能力とは一体…?)

絶句しているエミルを一瞥して、バルバリシアはヒールの高い靴でカツカツと石畳の上を歩く。
形の良い薄い唇に深紅の口紅が引かれ、女を艶わせていた。
こんな妖艶な魔物などいるのだろうか。
醜悪なゴブリンや獣形の魔物ばかり相手にしてきたエミルには信じられなかった。
「なんだ?その疑心な目は」
「…お前は人間だったのか?」
バルバリシアの口元が歪み、弧を描く。
「そうだ、私は元々人として生を受けた。もう遥か昔だ。戦士として国のために戦い、国の裏切りによって死んだ」
バルバリシアは自らの過去を語り出す。その記憶は辛く悲しいある女戦士の生涯だった。
「処刑される時に人間を恨んださ。そうだ、愚かな人間なんてこの世にいなければいい!そんな声をゴルベーザ様は受け入れ、私は蘇り、素晴らしい能力を手に入れる事ができたのさ」
「化け物め…」
「はん!ゴルベーザ様の為なら魔物でも化け物でも構わない。この世のクリスタルを全て集め、私達のような哀れな魂を全て甦らすのさ」
「そんな事はさせない!」
だからと言って今の世を恐怖に貶め、人々を苦しめていい理由にはならない。

エミルの言葉にバルバリシアは口元を歪め、嘲笑った。
「お前はゴルベーザ様に気に入られているようだけど、カインにも愛されていると勘違いしているようね」
バルバリシアの言葉にエミルは強く睨み付けた。
「貴様には関係無い」
「フフ、以前にカインがゴルベーザ様の下に居たときは私の恋人だったわ」
「……」
そんな話は聞いた事もない。エミルの額に嫌な汗が流れてきた。それはこの熱帯のせいなのか、それとも…
「そして、今も」
「……何?」
「カインは今でも私の声を心に聞いている筈」
ポタリとまた汗が額から伝い、地面へと垂れた。
「まさか…」







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