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「◆FF4 カイン夢小説」
恋のかけら(長編)

FF4 恋のかけら 47

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Final Fantasy IV・Dream Novel
恋のかけら・47



──出立する早朝。

エミルの自宅の床に散らばる金の髪。
それを一房掴むと、手の中でキラキラと輝いている。
「……エミル…」
握り締め、カインは目を閉じる。

以前この場所で、エミルと穏やかに過ごしていた。毎日国のために働き、疲れた身体を癒していたのもこの部屋だった。

ある夜の彼女との会話がカインの脳裏に浮かぶ。

「お前の家は兄弟が多いのか」
「うん、多いときは10人位いたかな」
手に持っていた瓶のミルクをグラスに注ぎ、カインに渡す。
「位?」
「父がバロンの近衛兵だったんだけど、警備の傍ら戦争孤児を見つけては家に連れて帰って来ていたんだ。もう趣味みたいなもんかな」
ベッドに脇に腰掛けるカインの横に座り、両手で持ったミルクを見つめる。
「あの時は貧しくて食べるのさえ苦しかったけど、大勢の兄弟がいて楽しかった。陛下の政策のお陰で村も繁栄して今は豊かになっているけどね」
カインの胸中には、セシルの幼い頃の不遇が甦っていた。
「お前も孤児だったのか?」
「ううん。父はお前は俺の娘だって言っていたけど、女の子は私しか居なかった。母は穏やかな人だったけど、幼い時に病気で死んでしまったんだ」
「……」
「父は私達に大人になって独り立ちしても困らないように剣術を教えてくれた。そんな時は男女子供関係なく厳しかったな。しょっちゅう傷だらけだったしね。でもそれが今の私の糧になっているから感謝している」
「近衛兵ウェッジ殿か…」
カインは父の傍ら、過去何度か城に出向いた事があった。側近の他に王の警護を任されていた近衛兵の何人かは顔見知りになったが、その中で一際子供好きな男を思い出した。まさか、その近衛兵がエミルの父親とは今まで結び付かなかった。
「知っているのか?」
「子供の時に何度かお会いした事があったな。まさか、お前があの人の娘とは…」
やがて年齢と衰えを理由に故郷に帰還したと、後にベイガン隊長から聞かされた。
「私と父が血の繋がらない親子でも別に構わないんだ。あんなに優しくて強い父は私の誇りだって自信を持って言える」
「父上は今郷里にいるのか?」
ゆらり、と蝋燭の灯が揺れた。
「……私が村を出る一年前にゴブリンの大群に殺られた」
「……!」
カイン達がバロン仕官学校へと進む数年前から周辺で魔物が頻繁に出没していた。
前大戦でバロン国王を始め、ヤンの国ファブール現王、忍術を扱うエブラーナの王、ローザとカインの両親も共に戦い、その戦いは数年に渡り熾烈を極めた。
人間族や魔物、双方に多大な犠牲を払い一時的にだが互いに不可侵となり、戦後数年間は比較的穏やかな日々が続くこととなる。
だが魔物達は数を増やし、人間に悟られずに何者かが魔物や幻獣の世界を支配し始めていた。未知の力を得て再び人間族を侵略しようと目論んでいたのだ。
「近衛兵とは言っても元、だしね。身体の衰えは隠せなかった。だから、私が今度バロン国に行って恩がある陛下の為に尽くそうと思っていたんだ。剣に自信があったし、村では誰にも負けなかったんだけど…」
「……」
「やっぱり、貴方には敵わなかった…な」
これを嫉妬と呼ぶには余りにも奢りだな、とエミルは思った。それだけ力の差は歴然だった。
どんなに身体を鍛えても、近衛兵として使命を全うしていても、バロン国屈強の暗黒騎士隊長と白昼戦のプロフェッショナルと呼ばれる竜騎士隊長では敵わない。
そんな事で卑屈になる自分も情けなくて嫌だった。
「……」
「カインは以前に私に無限の可能性があるって言ってくれたけど、そんな事はない。いつも悔しくてさ…」
ベッドの上で膝を抱えて俯くエミルが儚く小さく見え、カインは肩を強く抱き寄せると、顎を持ちその淡く朱に染まる唇を奪う。
「…んっ」
互いの吐息が熱い。
「俺こそ、お前に絶対に敵わない事があるんだ」
「何?」
少し拗ねた顔で見上げてくるエミルが可愛くて、カインは微笑した。
「…内緒だ」
恐らく、それを彼女に告げる事はない。

──瞳を開け、城内に向かって歩く。彼女との思い出を胸にしまい込んで握っていた手を開くと、髪がさらりと風に乗って飛んで行った。

ゴルベーザに洗脳される間際に感じた、自分の中にある黒い嫉妬。
セシルやエミルのバロン国に対する忠誠心が自分には足りなかった。
ただ父を越える為に強くなりたいと思っていた醜い自分に腹が立った。
密かに想っていたローザをセシルに奪われる悪夢に何度も襲われ、苛立たしい毎日だった。

だが、今は違う。
愛した人の為にもっと力が欲しいと願う。


セシルの地図を捲る音で我に返った。
「こっちは準備万端よ、セシル」
「こっちも!大丈夫」
ローザとリディアはそれぞれの持ち場で旅立つ準備を済ませ、セシルに告げた。
彼は羅針盤と世界地図で距離を測っている。燃料の調達も済ませてある。
「よし、バブイルの塔に向かう」
やがてコンパスを片手に地図から顔を上げ、操縦桿へと向かった。
その横でカインは空と風の様子を見る。
セシルは操縦桿を握ると、手前に引く。ゆっくりとその機体は高度を上げ、空へと舞い上がった。
機体上空でプロペラの回転する機械音が鳴り響いている。
「改めてお前の飛行技術に驚かされるな」
「そんな事はないよ。これも幼い頃からシドが僕に教えてくれた賜物だ。実は操縦士に憧れていたんだよ」
「そうか…」
自力では飛べない人間は、空への憧れを持っている。
士官学校に進んだ学生は剣士や魔導士と多種多様に進路を決めることができたが、空中戦が主力になる竜騎士は世襲制が強く残り、空に憧れてもその道に進む者は少なかった。
その反面シドの指導の元、数年前に新設された飛空艇技師に割と人気が集まった。
剣に自信がなくても、技術者として戦闘に携われる事ができるからだ。
「もし暗黒騎士になれなかったら、シドの下で働こうかなって思っていた位なんだ」
「士官学校首席が何言っているんだ」
カインが苦笑した。
「カインだって竜騎士にならなかったら何になるつもりだったんだい?」
その問いに少し考える。
「俺か…想像した事がないな。産まれたときから竜と竜騎士に接していたしな」
思えば父の亡き後、寂しさを紛らわせる為に竜と共に毎日を過ごした。
その竜は謀反を起こしたカインと別れ、バロンに没収された後行方を眩ました。だが先日帰還した際に他の竜騎士隊員が面倒を見ていると聞かされ、ひとまず安堵した。またいつか会える。鬱々としたカインの心の支えになっていた。
「カインだって僕に付き合ったばかりに、竜騎士団の隊長を…」
「…過去の事だ。それに、お前をバロンから離反させたのは俺だろう?」
「そうだったね」
二人は操舵室の窓から眼下に広がる風景を眺めながら無言になる。
飛空艇の隙間から吹く風が、口を噤んだ二人の髪を揺らす。

「エミルは…」
ポツリとセシルが呟いた。
「……」
「ゴルベーザの下にいるのか、それともバブイルの塔に囚われているのか」
「……」
その問いには答えない。
「どちらにしろ、必ず僕達が助けなくては」
「……ああ」
「無事でいてくれ、エミル」
「……」
カインは厚く覆われた雲の向こうにある、天にまで聳える塔を睨んでいた。

それは希望なのか、願いなのか、判らなかった。







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